東大寺 大仏さん台座「大仏蓮弁・蓮華蔵世界図(東大寺大仏蓮弁線図全体図)」【国宝】

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奈良 東大寺 大仏さん台座「大仏蓮弁・蓮華蔵世界図(東大寺大仏蓮弁線図全体図)」【国宝】

制作年

推定:749年〜757年(天平勝宝年間/奈良時代)

横幅

約2.17m

枚数

28枚(反花含め56枚)
28枚の総長:約18m

国宝登録指定年月日

1958年(昭和33年)2月8日

ちょっと大仏さんの座っていらっしゃる足元を見てみてください。

巨大な蓮の花弁があるのが分かるハズです。

この巨大な蓮の花弁は「上向きの蓮弁(請花)」と「下向きの蓮弁(反花)」とに分かれており、それぞれ合計28枚あります。すなわち「反花(かえりばな)」と「請花(うけばな)」は各28枚あるので実際には合計で56枚ある計算になります。

蓮弁1枚の大きさとしては、

請花の横幅が約2.17m、28枚の総長が約61m

反花の横幅が約2.49m、28枚の総長が約69.6m

です。

素材が金属であったことが幸いして幾多の焼失時の火熱から免れることができたため、創建当初(天平期)の面影を多く残しています。

「蓮華蔵世界」とは?

「蓮華蔵世界」とは、後述の「華厳経(けごんきょう)」や「梵網経(ぼんもうきょう)」に説かれる世界のことです。盧舎那仏が座する世界でもあり、「果てなき宇宙」でもあります。

蓮華蔵世界の盧遮那仏は、1000枚もある蓮弁(蓮の花弁)の台の上に鎮座されています。

さらに、その1000枚の蓮弁1枚1枚には大釈迦が鎮座されており、その大釈迦が鎮座されている1000枚の蓮弁の中には、それぞれ100億もの仏の世界が広がっていると云われます。

その100億の仏の世界にも、それぞれに小釈迦が1人(1体)ずつ鎮座されているといいます。

これら100億の仏1体1体は盧遮那仏の化仏(けぶつ/盧遮那仏の分身)と云われております。

だたし、実際のところ、大仏の台座には1000枚もの蓮弁があるわけではなく、56枚の蓮弁で1000枚を表現しています。(盧遮那仏の世界では1000枚の巨大な大蓮の上に座しておられます。)

東大寺・大仏殿の蓮弁に描かれている絵図の正体

請花(上向きの蓮弁)28枚の1枚1枚をよく見ると、毛彫(けぼり/タガネのような先の細い道具で削ること)で何かが描かれているのがわかります。 

1枚の葉の上部には釈迦如来が中央に座し、それを取り囲むように左右に各11体の菩薩(合計22体)が座している絵柄が描かれています。

⬆️請花の蓮弁各1枚に描かれている「東大寺大仏蓮弁線図全体図




最下部分の絵柄の意味

最下部分には7枚の蓮弁が描かれています。これらの蓮弁には「須弥山(しゅみせん)」とその周囲(左右)に「山(金剛山)」が描かれていると云われています。

「須弥山」とは、インドの遥か南の海に存在するといわれる山のことです。この山の頂には「善見城(ぜんけんじょう)」という城があり、城主は「帝釈天(たいしゃくてん)」です。

さらに、この須弥山には帝釈天以外にも、無数の菩薩たちが住んでいます。

仏教の世界観では、この世界は「一世界」と呼ばれ、この一世界こそ我々人間が住む世界であり、一世界が1000つ集まった世界を「小千世界」と呼びます。

この小千世界をまとめる存在として小さな釈迦如来が座しています。

真ん中の絵柄の意味

中段の世界は「中千世界」と呼ばれる世界であり、25段の横線が引かれています。線と線の幅は下に行くほど小さくなっています。

ここには「無色界(むしきかい)」「色界」「欲界(よくかい)」といった仏教における「三界」の世界観が表現されており、「4頭の動物の頭部」や「菩薩の頭部」「宮殿(建物)」などの絵柄が刻まれています。

25本の線1本1本で小千世界の集合と小千世界それぞれに鎮座する1000の仏を表現していると考えられています。また、この小千世界が集まった世界は「中千世界」とも呼ばれます。

この中千世界をまとめる存在が下記の蓮弁最上部に描かれた釈迦如来です。これらが示すものは梵網教や華厳経の教理です。

最上部分の絵柄の意味

最上部分の絵柄は上記、中千世界をまとめる存在として大きな釈迦如来と、その大きな釈迦如来を囲む菩薩たちが描かれています。

この最上部に描かれた大きな釈迦如来が1枚の蓮弁を司っている存在になります。すなわち中千世界と小千世界を司っていることになります。

ここまでの説明は請花(上向きの蓮弁)28枚のうちの1枚を説明をしましたが、28枚それぞれにこれとまったく同じ絵図が彫られています。

そしてこれら28枚の中千世界をまとめるのが、その上に座する大仏さん、つまり盧舎那仏になります。

分かりやすく解説すると・・

⬇︎最下部:小さな釈迦如来が治める「小千世界」(我々人間が住む世界)

⬇︎台座の中段:小千世界が1000つ集まった「中千世界」

⬇︎台座の最上部:大きな釈迦如来と無数の菩薩が中千世界と小千世界を総括する

28枚の台座の上:大仏さん(盧舎那仏)「すべての世界を総括する」

このような華厳経や梵網経が説く世界観を大仏さんおよびその台座を通して、見事に表現していることになります。

奈良時代にこのような世界観を現実のものとするために、構図(設計図)となる下絵を描いて見事完成させたわけです。驚きを隠せません。

蓮弁に描かれている絵図が示すもの

これら28枚の彫刻には、上述したようにまず下絵が描かれています。その下絵をもとにしてタガネなどの先の尖った金属で彫刻していくのですが、1枚1枚の絵柄が刻まれた時期は、およそ749年から757年(天平勝宝年間)の間と考えられています。

いずれも毛彫なので少し見にくいのですが、これらは「梵網経(ぼんもうきょう)」と「華厳経(けごんきょう)」の2つの教理(宇宙観)が表現されており、上向きの蓮弁28枚1枚1枚に同様の絵柄が刻まれています。

宇宙観とは?

宇宙観を分かりやすく例えるのであれば、太陽を中心として考えて、太陽を取り囲む惑星が示す様相は「太陽系」に位置付けられます。

その太陽系が1000つ集まった世界があったとすればそれは「銀河系」になります。銀河系がさらに1000つ集まった世界観は「超銀河系」・・というようにどんどんどん広がっていくと考えられますが、宇宙の果てなど誰も知りようがなく、計測したくても不可能であることから、おそらく『果てがない』と位置付けられます。

我々人間がどれだけ努力しても知ることなどできない世界・・つまり、仏の世界とはそれほど広大なものであり、そこに座する仏の存在とは我々人間の常識を超越した想像すらつかない世界なのです。すなわち知ろうと考えることこそが畏れ多いということです。

この無限に広がる宇宙=盧舎那仏が座する世界=盧舎那仏の大きさや力の大きさ、慈悲深さを示す1つの例えになります。

なお、これらそれぞれの蓮弁の中には華厳経の注釈書とも言える「摩訶般若波羅蜜経(まかはんにゃはらみつきょう)」や、西遊記でお馴染みの玄奘三蔵著の「阿毘達磨倶舍論(あびだつまくしゃろん」などの思想も取り入れられているとも云われます。

ところで・・「梵網経」って何?

梵網経(ぼんもうきょう)とは、大乗仏教の経典の1つで、「上巻」と「下巻」の2冊に分かれています。
上巻には「菩薩の階位や菩薩の世界観」などが記され、
下巻には「仏教における戒律や道徳」などが記されています。

じゃあ「華厳経」って何?

華厳経(けごんきょう)とは、インドの仏教をもとにした経典のことで、同じく「大乗仏教」の経典になります。

お釈迦様の思想が凝縮された経典とされており、現在の日本仏教の起源とも云われております。

ところで「華厳経(けごんぎょう)」って何?この経典は、ユーラシア大陸でまとめられたものが、日本へ流入し、後の日本仏教を大きく進展させました。

大乗仏教の「大きな目標」と言うか・・「思想」は、..「目標」てアンタ。衆生(しゅじょう)」、いわゆる「生きとし生けるすべての物を漏らすことなく救済しよう」という思想です。

そのため、巨大な大仏さんが造像されたというのですから、納得ができるというものです。

後に大乗仏教は「真言宗」や「浄土宗」、「臨済宗」といった宗派に枝分かれしていきますが、現在の日本においては、おおよそ「広い意味合いでの仏教」という感覚で受け止められています。

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